スタッフへの愛情を大切に、理念を軸にした採用と職場づくり

スタッフへの愛情を大切に、理念を軸にした採用と職場づくり

  • 「理念への共感」を重要視し、人手不足でも無理な採用はしない それぞれの良い点を見極め、新卒・既卒にこだわらず幅広く採用 働きやすい「当たり前」の環境整備が、採用の大きな武器になる

人手不足でも無理な採用はせず、理念に共感できるかを重要視

新卒、既卒に限らず、採用で大切にしていることはありますか。

酒井先生: 新たに人を採用する際、当院では最終的に必ず私自身が面談をするようにしています。見学時の対応などをスタッフにお願いすることはありますが、面接全てを任せることはしません。どうしてもスタッフ目線だと、一緒に働きやすそうか、コミュニケーションが取りやすいか、という視点にとどまりがちです。もちろんそれも重要な要素ですが、経営視点で将来を見据えて判断するためにも、私が直接会うようにしています。

先生ご自身は、面接でどのような点を重要視しているでしょうか。

酒井先生: 一番は、理念に共感できる方かどうか、という点です。大切にしている部分を妥協して採用してしまうと、それを機に積み上げてきたものが崩れてしまう懸念があります。スタッフ一人ひとりが努力して築いてきた「患者様からの信頼」、そして「歯科医院としてのブランド」は、一朝一夕にできるものではありません。そのため、たとえ急な退職で患者様の受け入れ可能数が減って売り上げが落ちたとしても、無理な採用はしてはならないと肝に銘じています。

理念を浸透させるために、意識していることはありますか。

理事: 私が担当している新人研修では、理事長が開業時に作成した理念を分かりやすくまとめた冊子を使い、理念を体現する上で大切なことや必要なことを説明しています。さらに、現場に入った後は週報を提出してもらい、理事長や直属の上司がその都度フィードバックを行っています。また、日常のちょっとしたアドバイスも理念に沿った伝え方を心がけ、行動に自然と結びつくように工夫していますね。

新卒・既卒を幅広く採用、既卒の面談こそ「成長意欲」を見極める

新卒、既卒と幅広く採用していますが、違いはありますか。

酒井先生: 新卒の歯科衛生士は、「染まっていない」とよく表現されますが、他院での経験がない分、当院の手技や考え方などを素直に吸収しやすいですね。それに、資格をとって働き始めたばかりなので、比較的向上心が強くて、やる気にあふれている人が多いと感じます。一方で既卒の歯科衛生士の魅力は、やはり「即戦力」である点です。開院して間もない当院にとっては、彼らの経験値は大きなプラスになりますし、若手の育成という面でもメリットがあると思います。

既卒の歯科衛生士を採用する際は、何を意識していますか。

酒井先生: 歯科衛生士に限らず歯科医師も同様ですが、経験を積んでいくと「自分はできている」と過信してしまうことがあります。本来はまだまだ学ぶべきことがあるのに、成長がストップしたままなんとなく仕事を続けている、という状態です。既卒の方を採用する場合は、外の世界を見てさらに成長したいという意欲があるか、歯科衛生士として将来を思い描き、目指す姿に向かって進もうとしているか、という点を見極めるようにしています。

働きやすい「当たり前」の制度を整え、スタッフに愛情を

分院展開は、経営戦略として開業時からお考えだったのでしょうか。

酒井先生: 経営戦略というよりも、治療や医院のマネジメント以外に私にできることは何かを考えたときに、「働く場を提供すること」だと思ったんです。ありがたいことにクオキャリアさんで募集すると、毎回多くの応募をいただきます。でも採用枠の関係で、良い方でもお断りせざるを得ないことが増えました。面接で話を聞くと、仕事に熱意があるのに他院で上手くいかなかったという方も多く、「なんとか救えないか」と思うようになり、仕事を全うできる環境づくりをしようと考えました。

対スタッフの観点での分院展開なんですね。

理事: そうですね。働く人の満足度が高くなければ、患者様にご満足いただける歯科医療は提供できません。歯科業界は、社員に対するケアや環境整備が、他の業界よりも一歩も二歩も遅れています。逆を言うと、気持ちよく働くために当たり前の制度を当たり前に整えれば、それが武器となる。そうすれば、人は自然とたくさん来てくれるのではないでしょうか。これからも、スタッフに愛情を注ぎ、皆で理念を体現していきたいと思います。