「方針を押しつけず、相手に寄り添う」―既卒歯科衛生士の採用で必要な意識とは

「方針を押しつけず、相手に寄り添う」―既卒歯科衛生士の採用で必要な意識とは

  • 既卒の歯科衛生士を採用、自院の方針を押しつけないよう意識 週休3日制を導入、急な欠勤にも対応できる体制を整備 歯科衛生士とのコミュニケーションで必要なのは「寄り添う力」

既卒の歯科衛生士を積極採用、手技へのプライドも尊重する

既卒の歯科衛生士を積極的に採用している理由は?

関先生: 当院は2021年に開院したのですが、やはり開院直後は教育体制などが整っていないこともあり、新卒の方ばかりだと運営が難しいと考えました。経験者の良い点は、知識や経験がすでに備わっていることです。ベースがあれば、当院のやり方も比較的スムーズに吸収してもらえます。しかし、ゼロの状態の方に最初から指導するのは、開業したての医院には難しいのではないでしょうか。現在は少し余裕も出てきたため、歯科衛生士4人のうち、1人は新卒で採用しました。

他院では「既卒歯科衛生士の採用は難しい」という声もありますが?

関先生: お気持ちはとてもよく理解できます。私は採用時、その方が勤めていた歯科医院の治療内容などをホームページで確認し、その上で、当院でどのような仕事をしたいのか、不安なことはないか、まずは聞くようにしています。そして、ご本人が持っている手技に対するプライドを大切にするよう伝え、当院のやり方とすり合わせています。もしかしたら、『それは良いやり方だ!』と私自身も気づくことがあるかもしれません。こちらの方針を押しつけるのではなく、お互いに歩み寄る姿勢を意識していますね。

「明日からもう来ません」、困った経験をもとに体制を変更

これまでの経営で、採用や人員采配で困ったことはありますか?

関先生: 困ったことはたくさんあります(笑)。一番大変だったのは、妊娠がわかった歯科衛生士さんが「明日からもう来ません」と言って、引き継ぎも何もなく報告した翌日から来なくなってしまったことです。担当制なのでその方の患者さんの予約も入っているし、人員の調整をする時間もないし……。もともと不満があったのだろうと思いますが、あの時は正直しんどかったですね。知り合いの衛生士さんに頼み込んで手伝ってもらい、綱渡りの状態でなんとか乗り切りました。

大変な経験を乗り越えられ、そこから変化したことはありますか?

関先生: それまでは基本的に週休2.5日制にしていたのですが、その出来事をきっかけに週休3日制へ変更しました。診療日に必ず誰かは休んでいる体制を組み、急な欠勤があっても、例えば「今週と来週だけ週休2日にして、週5日仕事してもらうことは可能ですか?」と出勤をお願いし、欠員を補えるようにしています。現在は常に余裕を持った体制を維持しており、急な人数減にも対応できる環境です。

大切なのは「寄り添う力」、理想を押しつけず耳を傾ける

普段、スタッフとどのようにコミュニケーションをとっていますか?

関先生: 普段から、一対一で話をする時間を設けています。例えば賞与のタイミングで改めて希望や不満を聞き取ったり、最近話をしていないスタッフがいたら声をかけたり、コミュニケーションを意識していますね。特に新しく入った方に対しては、入ってみてどうか、やりづらいところはないかを聞いて、例えば今までと道具が変わってやりづらいというような声があったら、その方に合った道具をそろえるなど、可能な限り要望を聞き入れるようにしています。

最後に、スタッフのマネジメントには何が必要だと思いますか。

関先生: 一番大切なのは、「寄り添う力」だと思います。院長として、スタッフにこうしてほしい、ああいうやり方はしないでほしい、という理想があるのは当然です。しかしそれを一方的に押しつけても上手くはいきません。採用の段階で当院の方針を伝えておくことで、絶対に折り合えないという状況をある程度防ぐことができるはずです。相手の声に耳を傾けて、できる限り希望を取り入れる。そうすることで、一人ひとりのパフォーマンスが上がり、結果として歯科医院全体が良くなるのではないでしょうか。