主力の歯科衛生士が不満を募らせ退職、マネジメントの大切さを痛感し環境整備に着手

主力の歯科衛生士が不満を募らせ退職、マネジメントの大切さを痛感し環境整備に着手

  • 矯正専門で開業するも、初月売上わずか8万円。苦難の半年間 主力だった歯科衛生士の退職をきっかけに、マネジメントの必要性を痛感 スタッフが将来像を描けるよう、ビジョン共有と定期面談を実施

理想を掲げ矯正専門で開業するも、“耐え忍んだ”半年間

矯正専門の歯科医院を開業しようと思った理由を教えてください。

堀畑先生: 父が歯科医師で保険診療中心の歯科医院を開業していたのですが、毎日ヘトヘトになっていて、経営の大変さを間近で感じていました。自分が跡を継ぐときには、保険診療以外の治療ができる歯科医院にしたいと思ったことがきっかけです。中でも矯正治療は、学んでいてその面白さを感じました。また矯正は、一生に何度も受ける治療ではありません。患者さんに「やって良かった」と思ってもらえる治療を提供したいと考え、矯正専門の歯科医院を開業しました。

開業当初、苦労したことはありましたか。

堀畑先生: 開業して半年間は、ほとんど患者さんがいませんでした。初月の売上は約8万円。スタッフの給料にも家賃にも足りない金額で、本当に焦りました。それが半年ほどたって、患者さんからの紹介が急に増えだしたんです。相談で終わり、ご自身が治療を受けない方も知り合いを紹介してくださるなどして、徐々に軌道に乗り始めました。今でも当院は紹介でいらっしゃる患者さんが多く、ありがたいことだなと思っています。

先延ばしにしていた課題が浮き彫りになった、主力スタッフの退職

現在、どのような方針で採用や育成を行っていますか。

堀畑先生: 基本的に新卒の場合は、学ぶ意欲がある人を採用しています。既卒で重視しているのは、当院の方針を理解し素直に受け入れられるかどうか。治療の方針はそれぞれのクリニックで異なりますから、新たな気持ちでイチから一緒にやっていけるかが大事だと考えています。既卒の方が入職した場合も、すぐに処置には入らず、まずは当院での働き方を覚えるところからのスタート。新卒も既卒も、入職後3か月間は基本的に口腔内の処置は行わず、挨拶や報告の仕方など基礎を身につけてもらうようにしています。

これまでに人材のマネジメントで大変だったことはありますか。

堀畑先生: 開業して1年ほどたったころ、一人だけいた歯科衛生士が退職することとなり、それを機に採用活動に取り組み始めました。求人媒体に掲載し、応募があればすぐに採用していたなか、幸いなことにとても優秀な既卒歯科衛生士が入職。即戦力として活躍してくれていて、ゆくゆくはチーフに……と考えていたのですが、ある時、そのDHから「先生は何を考えているのかわからない、仕事も毎日同じことの繰り返しで先が見えない」と不満をぶつけられ、私と激しく言い合いになった末に退職してしまったんです。たしかに当時、スタッフとのコミュニケーションは十分取れておらず、いわゆるマネジメントやスタッフ育成も全くしていない状況でした。他にも退職者が続き、まさにこの時が最大の危機だったと言えるかもしれません。

失敗を糧に、スタッフが目標を持って働ける環境を整備

不満を聞いて、先生ご自身はどのように感じましたか。

堀畑先生: そもそもスタッフとあまりコミュニケーションが取れていなかった上に、歯科医院としての目標やスタッフへの期待値なども全く伝えていなかったんです。必要とわかっていながら先延ばしにしていたことを「突きつけられた」という感覚でしたね。それ以来、まずは当院の目指す姿を言葉にして伝えるようにしました。また、定期的にスタッフと面談の時間を設けて話をするようにしています。

人材のマネジメントにおいて、何が大切だと思いますか。

堀畑先生: 彼らが目標を持って、3年後、5年後の姿を具体的に描きながら仕事ができるようにすることが大事だと考えています。辞めてしまったスタッフに、「毎日同じことの繰り返しだ」と言われたことがすごく頭に残っているんです。努力して成長した先にどんな未来があるのか、仕事内容、ポスト、給与を含めて、目指すべき将来像を明確に示せるよう、現在取り組んでいるところです。先日、実際にこのことをスタッフに少し話したところ、モチベーションが上がる様子が見受けられて、良い変化が出てきたように感じます。失敗を糧に、より良い歯科医院を築いていけるよう、これからも努力したいと思います。