
培った歴史を大切にしながら、時代に合わせて変化地域に根差し成長を続ける歯科医院に
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大正3年開院、約30年の休止期間を経て新たに再スタート 「直接見せる」ことで、見学に来た候補者に方針を伝える 培った歴史を大切にしつつ、時代に合わせた変化を
大正3年開業の歯科医院、約30年の休止期間を経て再スタート
こちらは、非常に歴史のある歯科医院だとお伺いしました。
中野文夫 先生: 当院が開業したのは大正3年の1914年。百年以上前のことです。旧中野歯科医院として診療を続けていましたが、私の伯父が歯科大学在学中に他界してしまい、30年間近い休止期間を経て、私が2002年に中成堂歯科医院として開業、再スタートをしました。建物も、当時の土台を残した上で内装や外装を新しくし、歴史を残しつつも新しい医療設備を導入したり、時代にあった衛生環境を整えたりしています。
ご自身で開院して以来、ぶつかった壁や課題などはありましたか。
中野 文夫 先生: もちろん、苦労したことはたくさんあります。私自身、一心不乱に仕事をするなかで歯科衛生士に対して「なぜついてこれないのか」という気持ちで接してしまうなど、うまく組織を運営できていない時期もありました。同じく歯科医師として勤務している妻がフォローしてくれたり、幸いにして、みんなをうまくまとめてくれる温和な性格の歯科衛生士が入ってきてくれたりして、何とか乗り越えました。院長として周囲に気を配ることはもちろん、今は自分自身もやり方を改める姿勢を持って取り組んでいます。
診療方針を伝えるため、見学時に「直接見せる」ことを意識

現在は、どのような方針で人材の採用や育成をしていますか。
中野 文夫 先生: 当院では、地域の皆さんと長くお付き合いをし、生涯にわたり患者さんの健康を診ていく、という方針を掲げています。小さなお子さんからご高齢の方まで幅広い患者さんがいらっしゃるため、スタッフにはコミュニケーションやホスピタリティーを大事にするよう伝えています。基本的には先輩が指導する形ですが、技術面に関しては外部講師にもお願いしたり、セミナーに参加してもらったり、いろいろな教育の場を活用するようにしています。
貴院の方針を伝えるために、採用で工夫している点はありますか。
中野 文夫 先生: 見学に来た際に、「直接見せる」ことを意識しています。例えば、患者さんの番号の一覧を見ると、11000番代、12000番代の番号がついている一方で、長年通っている方で二桁の番号の方もいます。患者さんと長くお付き合いができる歯科医院、ということを言葉で「聞く」よりも、それを「見る」ことで深く実感してもらえると感じています。口ではなんとでも言うことができますし、自分の眼で見ることで、見学に来た人も安心できるのではないでしょうか。
培った歴史を大切にしつつ、これからの時代に合わせた変化を

人材を定着させ安定した診療を続けるために、必要なポイントは。
中野 文夫 先生: 自分自身、いろいろと苦労して紆余曲折を経た上で、今は「時間と報酬」をしっかりすることが大事だと考えています。例えば残業手当のつけ方や、時間給の計算の仕方なども曖昧にせず明確にすることで、不安なく仕事をしてもらうことができます。それから契約書や就業規則をしっかりと作ることも大切ですね。そうすることで、「ここで働き続けたい」「産休や育休を取ってもまた戻ってこよう」と思ってもらえる環境になると考えています。
最後に、今後の歯科医院経営には何が大切だと思いますか。
中野 文夫 先生: 物価や人件費の高騰など、歯科医院を経営する環境は厳しいことばかりです。しかし、今後のさらなる高齢化や、団塊世代Drの引退を考えると、歯科医院の未来は決して悪いことばかりではないし、私たちが担う役割も大きいはずです。そこに向けて医療DXなどの時代にあった対応をすること、そして地に足のついた歯科医療をしっかりと提供することが大事だと考えています。当院も培った歴史を大事にしつつ、新しいものを取り入れ、変化をしていきたいと思います。