「院長 対 全員」の構図を作らないために…チーフ育成と階層別組織

「院長 対 全員」の構図を作らないために…チーフ育成と階層別組織

  • 院長だけの運営に感じた限界、「院長対全員」の構図で苦労も 体制を改善し職種ごとにチーフ設置、ミーティングで意識を共有 信頼できるスタッフをつくり、幹部と共に良い歯科医院運営を

院長一人で全てをすすめるやり方に、スタッフからの反発も

開業当時はどのような状況だったのか教えてください。

宮崎 裕基 先生: 当院が開業したのは2010年です。当初は、歯科衛生士はたった一人、歯科医師は私一人という体制でした。昨年、全面的に改築し、ユニットの数も3台から9台に増えました。たくさんの患者さんに来ていただくようになるにつれてスタッフの数も増やし、今では全部で30人くらいの体制になっています。

人が増えていく中、組織作りで苦労した点はありましたか?

ありました。最初のころは、院長である僕自身が一人で何でも決めて、あれもこれもトップダウンの歯科クリニックでした。しかし、一人でできることには限界があります。クリニックの規模も大きくなり行き届かないところが出てきて、さらにスタッフと一緒に取り組まなかったために、「院長がまた何かやってる」といった雰囲気になってしまったんです。時には反発も受け、うまくいきませんでした。

経験を踏まえ職種ごとのチーフを設置、意識を共有できる体制に

なるほど。孤軍奮闘ですね。今はやり方を変えたのですか?

そうですね。一人で全てをやろうとせず、今はスタッフの意見をきちんと聞く仕組みを入れて、スタッフと一緒にすすめるやり方に変更しました。さらに、一人で全て抱え込むと、何か問題があったときに「自分 対 スタッフ全員」という構図になってしまうので、全員は難しいですが、ある意味「味方」というか、課題感や目的を共有できるスタッフをつくるようにしています。

具体的には、どのような体制で運営をしているのでしょうか。

歯科衛生士、助手、受付と職種ごとにチーフのような役職を設け、その方たちと月に1回のミーティングを持ち、意識の共有をするようにしています。僕なりの理念や診療方針を、その幹部を通じてスタッフ全員に落とし込む感じですね。やはり、10人を超えるあたりから一人で全員を見るのは難しくなってきますし、お互いの仕事の問題を理解している同じ職種のチーフがいることは、スタッフにとってもやりやすいと思います。

面接もスタッフが担当、信頼できる幹部をいかにつくるかが大事

多くのスタッフがいる中で、採用でこだわっている点はありますか?

何か特別な採用方針などはありません。もちろん、当院には絶対に合わないなと思う方は採用しませんが、新卒でないと駄目とか、中途の人に限るといった線引きもしていませんし、比較的間口は広い方だと思います。クオキャリアに募集を載せると、特に新卒からの反応が大きいので、ここ数年は毎年必ず一人か二人新卒の人を採用できています。当院では、書類選考も、面接も、採用に関しては幹部スタッフが担当しているんです。最終的な面接は私も関わりますが、基本的には任せるようにしています。

採用に関して任せるというのは、信頼がないとできないですね。

そうですね。私の場合、歯科クリニックをうまく運営していくためには、信頼できるスタッフの存在が必要不可欠です。まだスタッフの数もそれほど多くない、一人ひとりに目を向けられるうちに、この人なら任せて大丈夫と思える信頼関係を築いておくことが重要ではないでしょうか。院長がどんなに頑張っても、一人でできることには限りがあります。信頼できるスタッフと共に、今後も良い歯科医療を提供していければと思っています。