人がいなければやりたいこともできない。同じ方向を向くために歩み寄る

人がいなければやりたいこともできない。同じ方向を向くために歩み寄る

  • 人手不足が原因でインプラント治療を断念 歯科衛生士が8名まで増え、“衛生士王国”に! スタッフを信じて“任せて伸ばす”

設備も技術もあるのに人手不足でインプラント治療ができない

開業当初の構想を教えてください。

朝山 哲夫 先生: 「予防なくして治療はない」と考えていたので、予防を中心に口腔外科など幅広いニーズに対応できる今の体制は、立ち上げのときから構想にありました。しかしインプラントについては、私が大学で臨床経験を積んで治療技術があるにも関わらず、人手不足が原因ではじめのうちは提供できませんでした。歯科衛生士はメンテナンスで忙しくアシストをお願いできない、道具の滅菌・消毒についても、スタッフに任せると他の業務が滞留してしまうから、自分がやるしかありませんでした。手術に対しての準備も組めない状態だったんです。人がいればできるけど、人がいないからできないということが多々ありましたね。

そのとき歯科衛生士の採用はどのような状況でしたか?

厳選している場合ではなく、どんどん採用せざるを得ない状況でした。ただ入っても人が少ないから教育がうまくいかず、それでも医院としては高いレベルを求めるので、離れていく人も多かったです。あの手この手を尽くしたけれどうまくいかない、そんなとき藁にも縋る気持ちでクオキャリアにお願いしたところ、何名か良い人材を採用することができました。採用に関してはわからないことも多いので、クオキャリアのサポートの手厚さはありがたいです。困ったときも営業さんにメッセージを送るとすぐに返信をくれて、すごく頼りになります。

新卒採用に成功。歯科衛生士8人の“衛生士王国”に

そこから歯科衛生士が8人まで増えたんですよね。

はい。5年目から体制をがらりと変えて、私と歯科衛生士だけにしたんです。歯科衛生士に受付事務を含めたすべての業務をやってもらったほうが経営的にもいいだろうと思って。その時点で歯科衛生士は5人でしたが、さらに新卒を3人採用して8人に。“衛生士王国”状態になりました。今でこそ歯科医師と歯科衛生士のみの歯科医院は増えていますが、当時は歯科医師会の先生たちに「うまくいくわけない」「そんなに多く雇ってどうするのか」と散々言われましたね。でも私としてはもともと予防歯科に力を入れたいと思っていたので、とても心強かったです。

そのまま安定したのでしょうか?

しばらくしてリーダーとサブリーダーが次々と抜けるタイミングがあり、みんなが少し不安になった時期がありました。しかしスタッフを信用して私からは大きな指示は出さず、「みんなよろしくね」といつも通り淡々と仕事をしていたら、そのとき一番キャリアが長かった子が現場を仕切ってくれるようになって。しかも雰囲気も業績も過去より良い状態になりました。

スタッフの声に耳を傾け、異なる意見も尊重する

先生はぐっとこらえて、あえて“任せてチェックして伸ばす”方針なんですね。

はい。意見を引き出すことはしますが、誘導は絶対にしません。まずは見守り、こうしたいと言ってくれたら全力でバックアップする。それが私の指導方針です。

スタッフと接する上で大切にしていることはありますか?

歩み寄る姿勢です。人が定着して育成もうまくいくようになったので、少し前から外部講師を招いた勉強会や症例発表会を開催することにしたんです。スキルアップのためだからと勤務時間外にやることもあったのですが、あるスタッフから「オーバーワークになるからやめてほしい」と言われたことをきっかけに、診療を少し早めに終わらせて開催することにしました。なぜスタッフの意見をすんなり受け入れたかというと、こちらが信念を押し通しても、人がいなくなってしまったらやりたいこともできなくなってしまうからです。全員が同じ方向に向かって進んでいくためには、独りよがりではダメ。勤勉さと謙虚さ、そして歩み寄る姿勢が大切だと思っています。