漫然と運営していては人は辞めてしまう。院長自身が気を配るスタッフマネジメントとは?

漫然と運営していては人は辞めてしまう。院長自身が気を配るスタッフマネジメントとは?

  • 採用してもすぐに辞めてしまい、人が定着せずに苦労したことも DX化を推進し働きやすさを改善、定着率も向上し効率的な運営を実現 スタッフに「丸投げ」しない、院長自身が全員に気を配る文鎮型の組織運営

「入っては辞める」の繰り返し、人が定着せず苦労も

開院当初は、どのような体制でスタートしたのでしょうか。

松井 雄一朗 先生: 今でこそスタッフも10人を超え、規模も大きくなりましたが、最初は歯科医師が院長である私1人と、パートの歯科衛生士が1人、それから助手が2人というスタートでした。患者さんを集めるのも大変でしたね。当院はビルの4階にあり、外からは分かりづらいんです。よく、開院すると技工士などの飛び込み営業がたくさん来ると聞きますが、それらも全くなく、自分から技工士さんに電話をしてお願いしていました。

増員する際の採用はどうでしたか。すぐに人が集まりましたか。

開院当初は現在ほど世の中が人手不足ではなかったので応募はあったのですが、採用した後なかなか定着せず、苦労しました。入っては辞める、入っては辞めるの繰り返しで、理由を聞いてもさまざまですし、そもそも本当の事情を話してくれているとも限りません。それでも何とか課題を解決するため、また、私自身の成長にもつながるように、こちら側に問題があったんだと考えました。そうして、「漫然と運営していては人は辞めてしまう」という前提のもとで対策を練り、今の体制を作ってきました。

スタッフの働きやすさを考え、惜しみなくDX化を推進

例えば、対策としてはどのようなことをしているのでしょうか。

スタッフが仕事をしやすいように、業務の中で可能なものはできる限りデジタル化しています。特に受付の「やりがいを感じるのは難しいけれど手間だけかかる」といった、例えば1日の来院患者さん100人分のカルテを出し入れするような業務です。私も受付業務を手伝ったことがあるのですが、生産性の割に業務負荷が大きく、ありがとうと言ってもらえることもありません。カルテを電子化するだけでも、受付スタッフの離職防止につながります。

確かに、単純作業の削減は、働きやすさにつながりますね。

それから治療でタオルを使っていたのですが、患者さんが増えればそれを洗って干す時間も比例して長くなります。小さいことですが、そのためにお昼休みが削られる、帰る時間が遅くなる…と地味に負担になっていくんです。それを減らすために、当院ではタオルをやめて使い捨ての紙にしました。費用はかかりますが、人が辞めてしまい新しい人を探す大変さを考えると、これで良かったと思っています。スタッフの働きやすさにお金をかけることが、結果としては効率的な運営につながるはずです。

特定のスタッフに「丸投げ」せず、院長自身が気を配ることが大切

スタッフが増え、マネジメントで気を付けたことはありますか。

できる仕事の難易度によってレベル制度を作り、新しいことができるようになったらレベルも給与も上がる仕組みにしています。ただし、上位にいる特定の人に権限を与えすぎるといわゆる「お局」を生み出しかねません 。下の人がやりづらくなる上、スタッフの管理がブラックボックス化してしまうので、そうならないよう注意はしています。あくまで重要なことを決める・伝えるのは院長である私の役割にして、ピラミッド型ではなく文鎮型の組織にしたことが当院にとってはうまく行ったポイントですね。

特定のスタッフに依存しすぎるのはリスクになるんですね。

やっとチームができて信頼できる人に任せられるようになった、安心だと思ってからが本当の正念場です。誰かに丸投げしてしまいその人が自由にやりすぎると不具合が出てくるので、ある程度は院長である私自身がグリップし続けることが大切だと思っています。私は今でも、当院の理念を毎日スタッフの前で読み上げています。浸透するかどうかはわかりませんが、継続すること、常に問題が起きていないか意識して気を配ることが組織運営の肝ではないでしょうか。