毎日の方針唱和や年1回の目標共有、築いた組織とともに、質の高い歯科医療を実現
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歯科衛生士とセミナーなどで勉強を重ね、治療方針を確立 1年間の目標は院長から共有、信頼するチーフが現場をまとめる 質の高い歯科医療で、患者もスタッフも集まる歯科医院に
「5年で開業しよう」と決意、必要な準備を経てオープン
開業した理由、開業までの経緯について教えてください。
葛山 賢司 先生: 歯科大学を卒業後、研修医として勤務していた歯科診療所で、開業に関する講義があり、それを受講したのが最初のきっかけです。その中で、開業するまでにどんな準備が必要か、どのようなことを身に付ける必要があるかを学び、5年かけてしっかりと開業できる状態を整えて、理想の歯科医院をつくろうと決めました。その後、歯科医師として必要な経験を積み、最後の1年間は退職してアルバイトをしながら開業準備に費やしました。最終的には開業支援の会社にもサポートを受け、1996年にかつらやま歯科医院を開業しました。
開業当初の体制から、どのように医院を大きくしていきましたか。
葛山 賢司 先生: 最初はユニット3台、スタッフは1、2年目の歯科衛生士一1人と歯科助手が二2人、それから事務長である妻というメンバーでスタートしました。開業後は、歯科衛生士と一緒に予防に関するセミナーに参加するなどして、当院としての治療方法を確立していきました。ありがたいことに患者さんも増え、そしてしっかりと予防をするためにはユニットを増やす必要があると判断し、徐々に人員とともに増やし、現在に至ります。今はユニット6台、歯科衛生士含むスタッフ16人の診療体制です。
ミーティングや目標設定など、組織作りに必要な制度を構築
スタッフが増える中で、どのように組織をマネジメントしていますか。
葛山 賢司 先生: 毎朝当院の診療方針を唱和し、スタッフ一人ひとりに理念やポリシーが根付くようにしています。それから、月に1回のスタッフミーティング、年に2回の面談など、内容や目的に合わせた頻度でいろいろな取り組みをしています。特に大切にしているのは、年に1回、私から1年の方針を改めてスタッフに伝える場です。毎年11月くらいにみんなに集まってもらい、次の1年間、当院が何を目指すのか、どのような方針で診療するのかという目標を、私から直接話すようにしています。
いろいろなタイミングで、意思疎通をはかっているんですね。
葛山 賢司 先生: そうですね。目標に関しては、スタッフも個人の目標を作ります。また、評価も私からのものだけではなく、スタッフ同士の評価もわかるようにしています。技術や人柄などいろいろな項目について匿名で投票し合う制度を設け、みんなから優れているという評価を受けた人を表彰しているんです。とはいえ、こうしたいろいろな仕組み、制度が最初からあったわけではなく、ある程度固まったのはここ10年ぐらいです。経営に関する勉強会などに参加し、少しずつ整えていきました。
しっかりとした治療を提供し、患者もスタッフも集まる歯科医院に
普段は、スタッフとどのようにコミュニケーションを取っていますか。
葛山 賢司 先生: 私はあまり、雑談などもしない方だと思います。いろいろなやり方があると思いますが、例えば若い歯科衛生士に私のような院長がいつも話しかけていると、かえって気を遣わせてしまうのではないかと思うんです。そのため、日常的にコミュニケーションを取ってみんなの様子に気を配る役割は、妻である事務長や、長年勤めているチーフの歯科衛生士に任せています。私のようなやり方の場合は、みんなをまとめる信頼できるスタッフをいかに育てるかが、組織作りの重要なポイントだと思います。
最後に、今後の歯科医院経営には、何が大切だと思いますか。
葛山 賢司 先生: やはり一番は、しっかりとした技術を身に付けた上で、自分だったらこういう治療を受けたい、と思える歯科医療を提供することだと思います。そのためには、勉強を続け、自分自身を磨き続ける必要があります。その歯科医院がどんな考えでどんな治療をしているのか、患者さんはもちろん、スタッフもよく見ています。「しっかりとした歯科治療」というその基本を押さえることができれば、治療に訪れる人も、一緒に働く人も、多くの人が集まる歯科医院にしていくことができると思います。