
スタッフと家族のような関係を築き、信頼できる「街の歯医者さん」を目指す
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「街の歯医者さん」としてスタッフとも家族のような関係を築く 新卒DHが「先輩」になるまで成長を見守り、離職を防ぐ 自主性を育てつつ、スタッフのモラルを重んじる
卒後間もない開業、当初は不安も感じていた
開業した理由、開業当初に感じていた課題などはありましたか。
金子 尚樹 先生: もともと、勤務医としてある程度の経験を積んだら、できるだけ早く開業したいという気持ちがありました。イメージしていたのは、小さくても地域に根差し信頼される、いわゆる「街の歯医者さん」です。しかし、いざ開業が決まるといろいろな不安も感じました。内覧会の前日、一人でクリニック内に設置する家具をトントン組み立てながら、「患者さんは明日来てくれるのだろうか」「多額の融資を返済できるのか」と気持ちの面が揺れていたことを思い出しますね。
人材の確保について、開業時のご苦労はありましたか。
金子 尚樹 先生: 幸い、オープニングメンバーが集まらない、ということはありませんでした。しかし、経営の勉強などをしっかりとしてから開業したわけではなかったため、今にして思うと、具体的に欲しい人物像や医院理念などを作りきれていませんでした。運よく当院は自分に合った良い人財が来てくれましたが、深く考えずに採用すると開業時のスタッフのほとんどが辞めてしまう、というケースもよく聞きます。まず理念があって、そこからどういう人を採用するのか練りこむことが必要だなと今は考えています。
自主性を生かした組織を作り、家族のような関係を構築

人材育成について、意識していることはありますか。
金子 尚樹 先生:
1年目の入職者には、当然特に気を配るようにしています。1年目は教わることばかりで先輩の気持ちが理解できず、離職リスクも高いと思うんです。そのため、1年目の歯科衛生士には「来年はあなたも先輩だよ、教える側になるんだよ」ということを伝えるようにしています。成長を見守ることができるのは仕事のやりがいの一つです。でも、1年目でそれを知らずに辞めてしまうと、また次の職場でも1からスタートです。1年目を乗り越えることができれば、今はまだわからなくても、後輩ができるという先輩としての仕事の楽しさがあるよと声をかけています。
あわせて、組織運営という観点で何か工夫していることは。
金子 尚樹 先生: 私は大規模展開するよりは、一拠点でもファミリー感のある歯科クリニックを目指しているので、家族のように、お互い思いやりを持とうとスタッフに伝えています。日々の業務連絡や指導は主任から各々に伝える形式をとっています。運営に関することを決めるのも、基本的にスタッフです。例えば歯科衛生士が使う機材にしても、まずはみんなに使ってもらって導入した方が良いかどうか意見を集めミーティングをしてもらいます。こうすることで自主性も育ちますし、スタッフがスタッフを教育するという良い流れができるのかなと感じています。
小さくても信頼される「街の歯医者さん」を目指して

任せる一方で、院長として状況をどうキャッチアップしていますか。
金子 尚樹 先生: 情報共有という意味では、当院の場合毎日診療後に行っている終礼がうまく機能していると思います。終礼では良いことも悪いことも率直に話せる場になるよう心がけています。そうすることで、問題はみんなで共有できますし、必要に応じてその場で対処もできます。あとは、スタッフ一人ひとりの表情など様子をしっかり見ることができるのが大切なことです。なんだか辛そうだな、何かあったのかな?と気になることがあるときは、早めに声をかけてコミュニケーションをとることが重要だと思います。
最後に、今後の貴院の展望について、お聞かせてください。
金子 尚樹 先生: 現段階では分院展開はせず、「量より質」で歯科医療の基本をしっかりと続けたいと考えています。患者さんの数を無理矢理集めたりすると、自分のやりたい歯科医療から離れてしまうと思うんです。一症例一症例を大切にし、信頼される歯科医療を提供することが、歯科業界の評価をあげることにつながる…そう信じて、患者さんを守り、スタッフを守り、「街の歯医者さん」として地域に根差した歯科クリニックにしていきたいと思います。