「つぶれるかも」の危機からユニット9台の人気歯科に。予防にかける院長の情熱
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予防特化の歯科クリニックに.最初は受け入れられず苦労も 歯科衛生士は自立して予防業務に専念、評価や教育の制度も整備 予防歯科文化を根付かせたい。同じ志を持つスタッフと歩み続ける
歯科医師のアシスタントではなく、衛生士が自立して予防に専念
貴院の診療方針、治療の特徴について教えてください。
岩田 祥一郎 先生: 当院は、虫歯にさせない、歯周病を進行させないための歯科医療を提供する、予防をメインとした歯科クリニックです。元々は、予防ではなく一般歯科など治療をメインとした歯科クリニックだったのですが、予防の必要性を感じて、8年ほど前から今の形に切り替えました。生涯口の中にトラブルがない状態を保つために、子どものうちからのケアも重視しています。ゼロ歳から通える歯科を目指し、保育園も併設しました。
歯科衛生士さんは何名いらっしゃいますか。
開院当初2名でしたが、現在は8名まで増えました。当院では、歯科衛生士はドクターのアシスタントという位置づけではありません。一人一台ユニットを持ち、自立して予防に専念しています。また、仕事を仕組化しており、誰が何をすべきかが明確なので、1日のうちで私が衛生士に指示を出すことはほとんどありません。新しい人への教育に関しても、わかりやすいマニュアルを整備し、衛生士が衛生士を指導する形が出来上がっています。
受け入れられず、「つぶれるのでは」と思ったことも
今の診療方針に変更した、具体的なきっかけはあったのですか。
虫歯などで一度悪くなってから治しても、結局無理があると感じたんです。お金をかけて治したのに数年後に抜歯になる方や、結局つぎはぎで限界になる方を見て、一時は、自分がやってきたことは間違っていたと感じ、歯科医師を辞めようとさえ思っていたんです。そんなときに、予防歯科に関する日本でも有名な歯科医師の本を読んで、これだと思いました。たまたまご縁があり、系列の先生を通じてやり方なども教えてもらうことができ、少しずつ自分なりに勉強して今の形にしていきました。
方針変更後の周りの反響はいかがでしたか。
一時は、診療方針の真意がうまく伝わらず「なら他へ行く」と患者さんの7割、8割がいなくなって、つぶれるんじゃないかと思ったこともありますね。スタッフも多くは残ってくれましたが、それまで当院でやってきた業務との違いに戸惑い、辞めていった方もいました。それでも信念を曲げず真摯に伝え続けた結果、次第に予防の大切さが浸透し、当院のやり方に賛同してくださる方も増えていき、今に至ります。
働きやすい環境を一つひとつ整えた結果、応募も来るように
採用ではご苦労はありましたか。
採用も、最初は全く人が集まらず大変でした。でも、質の高い予防をやるなら、歯科衛生士の存在は必須です。仕事の内容、評価の仕方、教育システム、そういったことを一つひとつ整えていって、やりがいのある働きやすい職場を整えていったら、自然と応募が来るようになりました。雰囲気を伝えるのも大切なので、数年前から、動画を使って、衛生士が自立して働ける職場だというアピールもするようにしています。患者さんに対してもスタッフに対しても、目的に向かって必要なことをあきらめずに積み重ねていった結果、今があるという感じですね。
最後に、将来の展望をお聞かせください。
来月、また一台ユニットが増えるんです。最初はもうダメかなと思った時期もありましたが、自分を信じて続けた甲斐があって、同じように予防の大切さを広げたいと考える仲間も増えてきました。予防をやりたい、歯科衛生士としてプロの仕事をしたいと考える方に是非来ていただいて、予防歯科を日本の文化として根付かせることができるよう、この地域から一緒に発信していきたいと思います。