一年間で8人が産休に…過去の経験から得た採用と組織運営の工夫とは

一年間で8人が産休に…過去の経験から得た採用と組織運営の工夫とは

  • もしもの際の家族の将来まで考え、人を雇う責任を認識 年齢層やライフステージが異なるスタッフを入れ、バランスを図る 「一人でも多く衛生士を雇え」という教えを意識

歯科衛生士の実習生を受け入れ、採用につながることも

最初に貴院の概要、治療の特徴などについてお聞かせください。

上條 達央 先生: 当院は、一般の虫歯治療はもちろん、小児歯科やインプラント、矯正治療など幅広く提供している歯科医院です。多様なニーズに対応するため、それぞれの治療を専門的に行う10名の歯科医師が在籍し、歯科衛生士9名、技工士や助手、受付スタッフをあわせて27名の体制です。歯科医師の研修医が学ぶ単独型臨床研修施設に認定されているほか、歯科衛生士の実習生も受け入れており、実習に来た方がその後採用につながることもありますね。

多くのスタッフを採用する上で大切にしていることは何ですか。

私の親戚に、看護師の叔母がいるのですが、その叔母はまだ子どもが小さいときに事故で夫を亡くし、看護師の仕事をしながら2人の子どもを育て上げたんです。開業直前にたまたまその叔母と話す機会があり、「人を雇うということは、場合によってはその人の家族、子どもの成長まで考える必要があるんだな」と、改めて感じました。当院の歯科衛生士に対しても、看護師に負けないような待遇や環境を整える必要があると、院長としての責任の大きさを意識しました。

幅広い年齢層を採用、組織のバランスと安定を図る

これまでに採用やスタッフの定着などで困ったことはありますか。

何度かありますね。例えば開業当時、歯科衛生士が3人いたのですが、そのうち2人は同じ学校出身の同級生で、残る1人もその2人の友人だったんです。3人仲が良く、もちろんそれは悪いことではないのですが、その3人のグループの結束が強いために、なかなか新しい人が入らなくなってしまいました。見学に来ても入りづらいと感じたのか採用に至らず、苦労しましたね。それから、8人のスタッフが懐妊するという年があり、これもおめでたいことですが、後の人材確保という面では少し大変でした。

人数が安定しない時期はどうしてもあると思いますが、その対策は?

特別に実践していることはないのですが、例えば今年採用した歯科衛生士は、2人の小学生のお子さんがいる方です。スタッフ数の多い組織なので、ライフステージや年齢などが固まらないようにすることで、多様性も生まれますし、組織としてもバランスを取ることができます。また、今はいろいろなツールが出ているので、歯科領域のDXをすすめて、人間ではなくてもできるところを自動化するなど、仕事のやり方を変えていくことも大切だと思います。休みに入る方を笑顔で送り出し、残る人の負担を減らすためにも、工夫が必要ですね。

肝に銘じた「一人でも多く歯科衛生士を雇え」の教え

長く勤める方と新しい方で一緒に組織をつくっていくんですね。

当院では、新卒で入ったスタッフの平均勤続年数が大体8年なんです。やはり2、3年で人がどんどん入れ替わってしまうと、歯科医院としての継続性がなくなってしまうので、今ぐらいのペースを維持していきたいと考えています。それから気を付けているのは、何があっても歯科衛生士の人数がゼロにならないように気を配ること。以前読んだ予防に関する本に、「余裕ができたら、一人でも多く歯科衛生士を雇え」という言葉があり、なるほどなと思いました。急な退職など予期せぬことがいつ起きるかわからないので、人数には余裕を持たせるようにしています。

長く働きたいと思える職場にするためには、何が必要でしょうか。

これも、特別何か仕組みをつくったりしているわけではないのですが、朝一番に来て、出勤してきた人たちと挨拶するように心がけています。あとは、食事が好きなスタッフが多いので、食事会にはできるだけ参加することですかね(笑)。やはり、仕事をする上で大切なのは人間関係だと思っています。私とスタッフ間だけではなく、スタッフ同士も良い関係を築き、楽しく働ける環境にしていきたいですね。