ニーズに応じて進化する歯科医院で「変化できるスタッフ」が必要な理由とは
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患者が増えたため増改築、ユニット数やスタッフの人数も増加 変化できる柔軟さを求め、既卒ではなく新卒採用を中心に 良好な関係性を保ちつつも、馴れ合わないチームをつくる
予約を断りたくない、地域の需要に応じて規模を拡大
広々として、開放的な歯科クリニックですね。
浅野 英成 先生: およそ15年前の2009年に開院したのですが、もともとはユニット4台の、もっと小さな歯科クリニックでした。今の敷地の一部も、当初は他のテナントに貸していたんです。ありがたいことに患者さんにたくさん来ていただくようになり、貸していた敷地や駐車場の一部を使って増築し、ユニットも増やしていきました。戦略的、計画的に広くしていったわけではなく、たくさんいただく予約をお断りしないために、ご要望に応じて大きくなっていった、という感じですね。今はユニットが10台になり、歯科衛生士も2名から7名に増えています。
歯科衛生士さんを採用する際の方針は何かあるのでしょうか。
開院当初は、即戦力となる既卒の歯科衛生士を採用していましたが、今は新卒を中心とした採用に切り替えています。どこの歯科クリニックも同じかもしれませんが、開院したばかりのころというのは、忙しくて人手が欲しい、さらに教育に人手を割く余裕がないため、既卒の人をメインで募集しがちです。しかし、当院のようにある程度開業して年数がたってくると、歯科クリニックとして積み重ねてきた経験をもとにイチから教育できる新卒採用に徐々に切り替えていくところが多いのではないでしょうか。
求めるのは、変化に対応する柔軟さや新しいことへの吸収力
新卒メインに採用方針を切り替えたのは、どのようなきっかけからですか。
かつて一度だけ、既卒で採用したベテランの方と、若手の人たちとで少しもめてしまい、クリニックの中が良くない雰囲気になってしまったことがあるんです。結局、ベテランの方が退職することになってしまいました。その時に感じたのは、やはり他でいろいろと経験をしてきたベテランの人は、それまでの自分のやり方をなかなか変えられない、ということです。歯科クリニックとして、今後もどんどん変化して成長していきたいと考えると、私たち自身、ずっと同じ仕事の仕方で良いとは限りません。新しいことを吸収できる新卒の方を採用したいとより感じるようになりました。
変化に対応する柔軟さも大事にしているんですね。
そうですね。当院はこれまでも、患者さんのニーズに合わせて開院当初からいろいろと進化しています。小さなお子さん連れの患者さんも安心して通えるように、広いキッズスペースのほか、当院が運営する託児所も途中で開設しました。それに合わせて、最近は保育士資格を持ったスタッフを採用していて、そのスタッフには、保育の仕事と合わせて歯科助手の仕事も担ってもらっています。今後も、地域の皆さんのご希望に合わせて、新しいことにもチャレンジしていけるようにしたいですね。
良好なコミュニケーション、しかし馴れ合わないバランスが大切
スタッフをマネジメントする上で意識していることはありますか。
当院はスタッフの人数が多いので、仕事で馴れ合ってしまう「仲良しグループ」ができないように、気を配っています。もちろん、スタッフ同士仲が良いのは悪いことではありませんが、特定の一部の人たちだけ密度が濃い関係になってしまうと、全体としてうまく回らなくなると考えています。そうならないように、例えばシフトでいつも同じ顔ぶれが重ならないようにするなど、全体でチームワークが機能するように工夫をしていますね。人間関係が希薄になっても良くないので、そのバランスが難しいところです。
人間関係を細かく管理していく必要があるんですね。
そうですね。あとは、多人数のチームをまとめるためには、人と人の間をうまくつないでくれるような、緩衝材となるスタッフの存在が必要です。これはもう勉強して身につけるものでもなく、人柄、その人自身の適性ですね。誰でもできる役割ではないので、新卒から育ったメンバーの中で適した人材を見極めていきたいと考えています。これからも、地域や患者さんのニーズは時代とともに変化していくはずです。当院もそこにうまくフィットさせながら、スタッフ一丸となって、皆さんにより良い歯科医療を提供し続けたいと思います。