「マイ道具」の貸与、治療への意見を聞く…プロとしての行動を求め、成長を促す
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採用に重要な医院見学、詳細な資料や実務を見せてミスマッチを防ぐ 歯科衛生士に治療の意見を求め、一人のプロとして向き合う 「問題が見えていないこと」が一番の問題、常に現状と真摯に向き合う
採用で大事なポイントは医院見学、実務を見せ理解を促す
開院当初は、どのような体制だったのでしょうか。
相宮 秀俊 先生: 一番最初は、歯科衛生士3人でのスタートです。当院はこの地域に高度な歯科治療を提供したいと思い開業しましたので、初めから教育だけを担当するフリーランスの歯科衛生士に来てもらい、全て新卒だけを採用して研修などをお願いしました。開院時としては多いかもしれませんが、新規オープンというアドバンテージを活かしたいと思っていたんです。途中から入ると人間関係などに不安を感じる人も多いので、最初から思い切って新卒採用をして、イチから教育できるいい人材を集めたいと考えました。
現在、採用にあたって意識していることは何かありますか。
いろいろとありますが、見学に来たときの対応は重要なポイントですね。症例検討会のように、資料を使ってどういう症例に対してどのような処置をしたのか説明したり、日常の歯科衛生士の仕事を具体的に見せたり、当院で働くということについて丁寧に見せるようにしています。もちろん、それで全員が当院を選んでくれるわけではありません。しかし、しっかりと内容を伝えることで、当院を理解して来てくれる人を採用できると考えています。
歯科衛生士には「マイ道具」を貸与、プロとしての意識醸成
詳細を見せることで、ミスマッチを防ぐんですね。
そうですね。当院での歯科衛生士の仕事は少し特徴があって、例えばうちに常勤で来た歯科衛生士には、全員その人専用の新しいスケーラーを貸与しています。その人にとっての「マイ道具」ですね。毎日磨いて手入れをして、といった道具の管理も自分自身の責任でやってもらうんです。そうした道具へのこだわりもクオキャリアさんの原稿で表現してもらっているので、採用活動や歯科医療の結果にも影響しているのだと考えています。
プロとしての意識醸成につながりますね。
私が歯科衛生士に求めるのは、歯科衛生士自身が最適な処置を考え、歯科医師に提案することです。例えば自由診療の場合、歯科医師だけでは、患者さんのニーズを取りこぼしてしまう懸念があり、歯科衛生士の存在は欠かせません。組織として上下関係はありますが、診療においてはお互い一人のプロフェッショナルです。歯科衛生士としての意見はどこにあるか、それに対して私はどう考えるか、日々、話し合うことも多いですね。その積み重ねが、歯科衛生士の成長にもつながると思います。
理想の医院の実現に向けて、一つひとつ目の前の課題に取り組む
医院経営全体を通して、心がけていることはありますか。
目の前にある一つひとつのことに対して、丁寧に取り組むことを大切にしています。ただ、特に開業時などは日々の忙しさに追われて、やりたいことがあってもつい後回しになってしまいがちだと思います。そうした中でも、毎日積み重ねていくことが理想の医院の実現につながるはずです。とは言ったものの、私自身、本音を言うと毎日「窮地」にいるような感覚です(笑)。問題が顕在化した時点で「手遅れだった」とならないために、常に先回りして問題の芽を見逃さないようにしています。
数多くの積み重ねの上に、今の医院があるんですね。
そうですね。おかげで今は、日々の診療の中でスタッフと一緒に患者さん一人ひとりの症状や状況に応じて、その方にあった選択肢や治療のストーリーを一緒に考えるのが、本当に楽しいんです。楽しみながら、一緒に成長していける、そんなスタッフと共にクオリティの高い歯科治療を提供していきたいと思います。